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複合機における不揮発性メモリのリスクと対策:設計エンジニアが知っておくべきポイント
複合機に搭載される不揮発性メモリの仕組みとリスク、情報漏洩を防ぐための設計対策について解説します。設計エンジニアが製品設計時に考慮すべきポイントと、今後のセキュリティ対策の方向性も紹介します。
目次
複合機における不揮発性メモリの役割とリスク
複合機は高度なデジタル制御が求められる装置であり、ファームウェアや設定情報、ジョブデータを保持するために不揮発性メモリ(NVM)が欠かせません。不揮発性メモリは電源を切っても情報が保持される特性を持ちますが、この利便性は同時に情報漏洩のリスクも伴います。特に業務用途で利用される複合機では、スキャンデータや印刷ジョブに含まれる機密情報がメモリ内に残存する可能性があり、セキュリティの観点からもその管理が重要になります。
不揮発性メモリとは何か
不揮発性メモリ(Non-Volatile Memory:NVM)とは、電源を切っても保存されたデータが消えないメモリの総称です。代表的な種類には、フラッシュメモリ(NAND、NOR)、EEPROM、FRAM(FeRAM、強誘電体メモリ)などがあり、それぞれに容量や書換速度、耐久性などの特性が異なります。複合機では、設定値の保存、ファームウェアの格納、一時的なスキャン・印刷データの保管などにNVMが使用されます。そのためNVMは、安定した運用の鍵を握る一方で、保管データが意図せず残存することでセキュリティ問題の要因にもなり得ます。
複合機における不揮発性メモリの使用例
複合機では多様な用途に不揮発性メモリが利用されています。例えば、電源オフ時にも設定が保持される管理情報(IPアドレス、ユーザー認証情報など)の保存や、ファームウェア・OSの格納領域としての使用が一般的です。さらに、ジョブ実行中の一時データやエラーログの保管にも用いられます。最近の複合機では、HDDやSSDといったストレージに加えて、メイン基板上のEEPROMやNANDフラッシュが組み合わされ、用途に応じたデータの分散保持がなされています。これらのメモリに保存されたデータが外部に流出した場合、重大な情報漏洩につながる危険性があります。
不揮発性メモリに関連する情報漏洩のリスク
複合機に搭載された不揮発性メモリは、ユーザーが認識しにくい形で機密情報を保持していることがあります。たとえば、スキャンされた文書や印刷指示されたデータがフラッシュメモリやHDD内に一時保存され、そのまま残存してしまうことがあるのです。特に企業で使用される複合機では、個人情報、契約書、設計図面などの機密データが含まれるケースが多く、情報漏洩が企業の信頼や法的責任に直結します。また、機器の廃棄・リース返却時にメモリ内容が完全に消去されていないと、第三者に情報を読み取られるリスクもあります。
情報漏洩を防ぐためのセキュリティ対策
データの暗号化とアクセス制御
複合機のセキュリティ対策の基本は、データの暗号化と適切なアクセス制御にあります。不揮発性メモリに保存されるファームウェア、ユーザー情報、ジョブデータは、AESなどの暗号アルゴリズムで暗号化されることで、物理的に情報が抜き取られても内容を判読されにくくなります。また、管理者やユーザーごとに異なるアクセス権限を設けることで、不正操作や誤操作による情報漏洩を未然に防ぐことが可能です。こうした制御は、ハードウェア側の実装だけでなく、ソフトウェア設計との連携も重要です。
定期的なデータ消去と初期化
不揮発性メモリに蓄積されるデータは、定期的に消去・初期化を行うことで、漏洩リスクを大幅に低減できます。多くの複合機メーカーは、印刷ジョブ終了後の自動データ消去機能を提供しており、設定により消去タイミングや方式(上書き、ゼロフィル、乱数化など)を選択可能です。また、機器の廃棄やリース返却時には、メモリ全体の完全初期化が重要となります。この処理を確実に実施できる機能を設計段階から組み込むことが、エンジニアに求められる重要な責務です。
設計エンジニアが考慮すべきポイント
製品設計時のセキュリティ要件の定義
セキュリティを製品に確実に組み込むためには、開発初期段階で明確なセキュリティ要件を定義することが重要です。不揮発性メモリに関しては、どのデータをどの形式で保存するか、どのようなアクセス制御を設けるか、そしてデータ消去の手順と保証範囲をあらかじめ設計書に盛り込むべきです。さらに、想定される脅威モデルに対して十分な耐性を持つかどうかの評価や、第三者機関によるセキュリティ評価の活用も有効です。これにより、製品出荷後の不具合リスクや信頼性低下を未然に防ぐことが可能になります。
ユーザー操作の簡素化とセキュリティの両立
高度なセキュリティ機能を導入する場合でも、ユーザーの操作が煩雑になっては逆効果です。設計エンジニアは、暗号化設定やログ消去などの機能を直感的なUIで提供することで、非技術者でも適切なセキュリティ管理が行えるよう配慮する必要があります。また、オートメーション化されたバックグラウンド処理や、ポリシーに基づく自動制御の導入も有効です。こうした工夫により、セキュリティを犠牲にすることなく、現場での運用効率やユーザー満足度を高めることができます。
最新のセキュリティ動向の把握と対応
技術の進化とともに、セキュリティに関する脅威も日々高度化しています。設計エンジニアは、業界標準や国際規格(ISO/IEC 15408など)に加え、複合機に関連する脆弱性情報や最新の攻撃手法について継続的に情報を収集する姿勢が求められます。加えて、ファームウェアのアップデート機能やリモートメンテナンス対応など、導入後のセキュリティ維持を想定した設計が必要です。これにより、長期間にわたり信頼性を維持する安全な製品開発が可能となります。
まとめ
不揮発性メモリのリスクと対策の要点
複合機に使われる不揮発性メモリは、電源断後もデータを保持する特性から、情報漏洩のリスクを伴います。主な対策としては、データの暗号化、アクセス制御、定期的なデータ消去などが挙げられます。さらに、設計段階でのセキュリティ要件の定義や、運用環境に応じたセキュリティ設計が不可欠です。これらの対策を講じることで、NVMのリスクを最小限に抑え、製品の安全性を確保できます。
設計エンジニアとしての責任と役割
設計エンジニアは、単に機能要件を満たすだけでなく、製品のライフサイクル全体を見据えたセキュリティ設計を行う責任があります。不揮発性メモリに関しても、保存データの取扱いや消去手順の明確化、誤操作の防止機構の設計など、リスク軽減に向けた主体的な取り組みが求められます。特に業務機器として利用される複合機では、社会的責任も伴うため、信頼される設計が求められるのです。
今後のセキュリティ対策の方向性
将来的には、AIによる自動脅威検知や、量子暗号技術への対応といった高度なセキュリティ技術が複合機にも求められる可能性があります。また、クラウド連携やIoT対応が進む中で、複合機もネットワーク経由の攻撃対象となりうるため、常にアップデート可能なセキュリティアーキテクチャの導入が重要です。設計エンジニアはこうした動向に敏感であると同時に、柔軟に対応できる構造設計を意識することが、今後の製品競争力を左右する鍵となります。
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