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擬似SRAM(PSRAM)とは?特徴・用途・FeRAMによる代替可能性まで設計エンジニア向けに徹底解説
擬似SRAM(PSRAM)の仕組みや特徴、SRAMとの違い、具体的な用途から設計時の考慮点、さらにFeRAMによる代替可能性までを設計エンジニア向けにわかりやすく解説します。
擬似SRAMの基本と技術的概要
擬似SRAMとは何か?DRAMセル+SRAMインターフェース
擬似SRAM(Pseudo SRAM、PSRAM)は、内部にDRAMセルを用いながらも、外部からはSRAMと同様にアクセスできるように設計された不揮発性でないメモリです。SRAMと比較してセルあたりのトランジスタ数が少なく、コスト・面積効率に優れる一方で、内部には自動リフレッシュ回路を備えており、SRAMと同様の使いやすさを実現しています。この構成により、マイコンやSoCなどの設計において、高速性と低コスト性を両立させる用途に適しています。アクセス時間はSRAMよりやや劣りますが、DRAMよりは高速で、特にキャッシュ用途や一時データ保持などに広く利用されます。
1T‑SRAM/PSRAMのセル構造とリフレッシュ隠蔽技術
1T‑SRAMは、擬似SRAMの一種で、1トランジスタ+キャパシタ構成のDRAMセルを用いながらも、専用のセル管理回路とリフレッシュ隠蔽ロジックにより、外部からは完全にSRAMと同じように動作する特徴を持ちます。通常、DRAMではリフレッシュ中にアクセス制限が生じますが、1T‑SRAMではバックグラウンドで自動的にリフレッシュを行い、アクセス遅延をほぼゼロに抑えています。この仕組みは専用のコントローラ回路によって実現され、CPUなどホスト側に追加処理負荷を与えることなく、低電力かつ高集積なメモリ構成を可能にします。特に携帯機器やゲーム機器など、消費電力と性能の両立が求められる分野での採用実績があります。
SRAMとの違い・メリットとデメリット
擬似SRAMと通常のSRAMは、インターフェースレベルでは互換性があるものの、内部構造には大きな違いがあります。SRAMは6T(6トランジスタ)構成でセル単位でデータ保持が可能であり、高速・ノンリフレッシュが特長です。一方、擬似SRAMはDRAMセルにリフレッシュ回路を組み込むことでコストと面積を削減しています。メリットとしては、①高集積化が可能、②消費電力の低減、③SRAMに近いアクセス利便性が挙げられます。デメリットは、①リフレッシュによるレイテンシ発生の可能性、②SRAMに比べてわずかにアクセス速度が劣る点、③長期間アイドル状態ではデータの揮発が生じる可能性がある点です。したがって用途に応じた適切な選定が重要です。
アプリケーションと活用事例
SoC/組み込み機器での採用事例(モバイルやマイコン)
擬似SRAMは、モバイル端末や組み込みマイコンにおいて、主にキャッシュ用途や大容量データの一時格納先として活用されています。Wi-FiやBluetooth機能を統合したプロセッサなどでは、外部メモリとして擬似SRAMを追加することで、処理能力を維持しながらメモリ容量を柔軟に拡張可能です。これにより、高解像度の画像処理やオーディオ処理などメモリ負荷の高いアプリケーションにも対応できます。内部リフレッシュ制御により、ソフトウェア的なリフレッシュ管理が不要であり、設計を簡略化できる点も大きな利点です。
業界別の製品展開例(HYPERRAM相当、各社汎用PSRAM)
擬似SRAMは、さまざまな業界向けに複数の製品カテゴリが存在し、構成やインターフェースに応じて選定されています。たとえば、一部の製品は低ピン数のシリアルインターフェースを備えており、プリント基板面積を最小限に抑えた設計が可能です。また、高速データ転送を重視する用途向けには、パラレルバス型や拡張バス対応の製品も存在し、リアルタイム処理や映像出力などのアプリケーションに活用されています。これらの製品はいずれも低電圧駆動やスタンバイ時の省電力動作を特徴としており、省エネ性能が求められる端末機器との親和性が高いと言えます。
歴史的開発知見(初期型PSRAMに見られる技術的進展)
擬似SRAMの基本技術は1980年代から研究されており、当初はDRAMセル構造を採用しつつ、外部制御なしで自律的にリフレッシュ可能な回路が設計されていました。このアプローチにより、当時の高コストなSRAMの代替として注目され、小型コンピュータや制御装置に組み込まれていました。これらの先行技術は、今日の擬似SRAMのセル構造や動作モードの設計指針に大きな影響を与えています。現在でも、当時の発想に基づいた「外部非依存型リフレッシュ制御」や「高速読み書きアクセスの維持」が基本思想として継承されています。
設計エンジニアが押さえておくべき考慮点
速度・電力・消費面での性能評価とトレードオフ
擬似SRAMを設計に導入する際には、動作速度・消費電流・スタンバイ時の電力など、複数の要素間でのトレードオフを考慮する必要があります。一般的に、擬似SRAMはSRAMに比べてアクセス時間がやや長くなる傾向がありますが、その分セル構造が簡素であるため、待機時の電力消費や動作時の平均電流値は抑えられています。低電力動作が求められるアプリケーションではこの特性が優位に働きますが、高速アクセスが重視される用途では、用途との適合性を精査する必要があります。また、リフレッシュ中の一時的な遅延やタイミング変動も評価対象となります。
ピン数・インターフェース上の制約と設計実装の注意点
擬似SRAMは、インターフェースの種類によってピン数や配線レイアウトに大きな影響を及ぼします。例えば、パラレル接続型ではアドレス・データバスの独立配置が必要なため、多ピン構成となり、プリント基板上の設計負荷が増します。一方、シリアル通信型や特殊な同期バス方式に対応した製品では、ピン数が削減でき、基板スペースやレイアウトの自由度が向上します。ただし、シリアル型ではアクセス速度に制限が出るケースもあるため、転送速度と回路規模のバランスをとる必要があります。タイミングマージンや電源ノイズ耐性についても、事前の評価が重要です。
コスト・集積密度比較:SRAM/DRAM/PSRAMの差分
メモリ選定においては、コストと集積度の観点も重要な評価軸です。SRAMは6トランジスタ構成で高速かつ安定した動作が可能ですが、セル面積が大きく、容量あたりのコストが高いという課題があります。一方、DRAMは1トランジスタ+キャパシタ構成で高密度化が可能ですが、制御回路や外部リフレッシュが必要です。擬似SRAMはこの中間に位置し、DRAMセルを用いつつもインターフェースはSRAM互換とすることで、コスト・集積度・設計の容易さのバランスを取っています。結果として、中容量帯のメモリ用途に適し、面積制約やコスト抑制が求められる製品に適しています。
FeRAMは擬似SRAMの代替となるか?技術的・用途的観点からの考察
FeRAM(強誘電体RAM)は、電源遮断後もデータを保持できる不揮発性メモリであり、SRAMや擬似SRAMの代替候補として注目されています。FeRAMはSRAMとインターフェイス互換の製品があり、データ保持のためのリフレッシュが不要で、極めて低い待機電力と高速な書き換え特性を併せ持っています。一方、セル構造が特殊であるため、容量の大規模化が難しい、書き換え回数が無限回とは言えないといった課題も存在します。最近の技術開発によりFeRAMのスピードはほぼSRAMと同等になってきており、擬似SRAMと高速性や低消費電力性では共通点がある一方、コスト面では現時点での代替には一定の条件が伴います。用途に応じてFeRAMを補助記憶やキャッシュ用途として使い分ける設計が現実的です。
まとめ
擬似SRAMの利点を活かす最適な活用シーン
擬似SRAMは、DRAMセルと内部リフレッシュ回路を組み合わせながら、外部からはSRAMと同様に扱えるメモリです。SRAMに比べてセル密度が高くコスト効率に優れる一方、リフレッシュを意識せず設計できる点が魅力です。面積制約や省電力性が求められる携帯機器や制御装置など、一定の高速アクセスと中容量を両立したい設計に非常に適しています。
将来的な技術トレンドと市場展望(2025~2032年)
今後も「高速性・低消費電力・高集積性」という三要件はメモリ市場の中心であり、PSRAMは中庸な選択肢として存続が見込まれます。ただし、FeRAMなどの不揮発性メモリの普及や低電力向けDRAM技術の進化により、PSRAMの利用領域はニッチに再定義される可能性があります。エッジAIや次世代センサーでは用途別に最適化されたメモリ構成が求められますが、PSRAMは省設計性と容量バランスの面で一定の位置を占め続けるでしょう。
エンジニア向け次のステップと参考リソース
設計段階ではSRAM・DRAM・PSRAM・FeRAMなど各メモリ技術のセル構造、消費電力バランス、アクセス性能、供給安定性などを比較評価することが重要です。また、PSRAMの仕様書やアプリケーションノートによる実装事例の確認、不揮発性メモリに関する最新レポートの収集も推奨されます。特に、FeRAMの高速書き換えや高耐久性などの特性は、PSRAMとの機能差を理解するうえで参考になります。
RAMXEEDが提供するFeRAM製品一覧
https://www.ramxeed.com/jp/products/feram-products
RAMXEEDが提供するReRAM製品一覧
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