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2025.10.16

センサー用アナログASICの基礎と設計の全体像

センサー用アナログASICの基礎から回路構成、設計技術、実装時の課題までを体系的に解説します。低ノイズ増幅や補正回路、A/D変換の設計ポイントが理解できます。IC設計実務に役立てられます。

センサー応用とアナログASIC:役割と必要性

センサーから出力される微弱なアナログ信号を正確に取得・処理するには、専用のアナログASICが有効です。センサー特有の信号特性やアプリケーション要件に対して、高精度かつ低ノイズなアナログ処理を行う回路設計が求められます。

センサー信号の特性とアナログ処理の要求

センサーは、温度、圧力、加速度、磁気など物理量を検出し、それをアナログ信号として出力します。これらの信号は一般に微小であり、ノイズに埋もれやすいため、高い信号対雑音比(SNR)を確保する回路が必要です。また、多くのセンサー信号は非線形で、周囲温度や供給電圧の影響を受けやすいため、それらを補正するための高精度なアナログ処理が求められます。さらに、センサーの応答速度や動作環境に応じた設計最適化も重要です。

汎用ICでは難しい点:ノイズ・分解能・マッチング

汎用のアナログフロントエンドICでは、特定のアプリケーションやセンサー特性に対して最適化が難しく、不要な回路が実装されていたり、仕様過剰または不足が生じることがあります。特に、微小信号処理においては、ノイズ性能や入力オフセット、ゲイン誤差、温度ドリフト特性などの微細な性能差が出力精度に大きく影響します。また、センサーと回路のインピーダンスマッチング、温度変動に対する補正など、アプリケーション固有の設計要件を満たすには、専用設計されたアナログASICが適しています。

アナログASIC を導入する利点と適用例

アナログASICを採用する最大のメリットは、目的に特化した高性能・高集積回路を実現できる点です。特定センサーに対する増幅、フィルタ、変換処理をワンチップで実現することで、部品点数を削減しつつ、サイズ、消費電力、ノイズ性能を最適化できます。たとえばMEMS加速度センサー、圧力センサー、磁気センサーなどでは、各物理量に応じた専用アナログフロントエンドを実装し、高感度かつ信頼性の高いセンシングを実現できます。また、温度補償やオフセット調整も回路側で処理でき、外付け調整部品が不要になるなど、製品の小型化・高性能化が可能です。

アナログASIC における主要回路ブロックと設計技法

アナログASICでは、センシング信号を処理するための複数の回路ブロックが統合されます。代表的な要素としては、増幅、フィルタリング、A/D変換などがあり、それぞれに高精度かつ高効率な設計が求められます。

増幅回路/差動アンプ/低雑音設計

微小信号を扱うセンサー用アナログ回路では、最初段の増幅器の性能が全体の信号品質を左右します。特に低ノイズアンプや差動アンプの設計は重要で、入力換算ノイズやオフセット電圧をいかに低減できるかが焦点となります。設計手法としては、トランジスタのバイアス条件を最適化し、チョッパー安定化やオートゼロ技術を用いてオフセットドリフトを補償する手法が有効です。また、PSRRやCMRRといった外乱耐性の強化も求められるため、電源・基板ノイズの影響を抑え込む工夫も不可欠です。

フィルタ・補正・温度補償回路設計

センサー信号にはノイズやオフセット成分が含まれるため、信号整形のためのアナログフィルタが必須です。高周波ノイズを除去するローパスフィルタ、温度ドリフトを補償するバンドギャップ回路、さらにはセンサーごとに異なる非線形特性を補正する直線化回路などが実装されます。これらは回路規模に制約がある中で高精度かつ安定に動作する必要があり、抵抗やコンデンサの選定、レイアウト上の配置にも設計ノウハウが求められます。さらに、校正用にOTPメモリやヒューズを組み込むことで、後段の補正やトリミングも可能になります。

アナログASICにおいてA/D変換は、センサー信号をデジタルシステムへ橋渡しする重要な役割を担います。代表的な変換方式としては逐次比較型(SAR)、パイプライン型、デルタシグマ型などがありますが、センサー特性や消費電力要件に応じて適切な選択が必要です。A/Dの前段には、正確な信号取得を実現するためのサンプルホールド回路や、安定したドライバ特性を持つバッファ回路が配置されます。特に、帯域幅、直線性、積分誤差、微分誤差など、回路ブロック間の連携を意識したトータル設計が不可欠です。

実装上の課題と設計上のトレードオフ

アナログASICの設計では、実装時に発生する物理的・電気的な課題を考慮しながら、性能、コスト、サイズのバランスをとることが求められます。特に、ミスマッチやノイズの影響に強い設計手法が鍵となります。

レイアウト設計、寄生容量・寄生抵抗の影響

アナログ回路は微細な電気特性の変化に敏感なため、物理レイアウト設計が性能に直結します。トランジスタのミスマッチを抑えるための対称配置、寄生容量や寄生抵抗を抑えるための配線最適化が求められます。特に高インピーダンスノードに接続されるパターンでは、周辺信号とのクロストークやフロアノイズの影響を受けやすいため、ガードリングやシールド配置の検討が重要です。また、レイアウトパターンの対称性を確保することで温度ドリフトの抑制にも寄与します。これらはシミュレーションだけでは把握しきれず、実地のノウハウが強く影響する領域です。

電源設計と電源ノイズ耐性、LDO やレギュレータ設計

アナログASICにおける電源ノイズは、信号品質を劣化させる主因のひとつです。電源電圧の変動やリップル成分は、増幅回路のゲインやオフセットに影響を与えるため、回路内部にLDOやシャントレギュレータを組み込み、電源電圧の安定化を図る必要があります。また、外部電源ノイズを遮断するためのデカップリングコンデンサの配置、グラウンド分離、アナログ・デジタル分離なども基本となる設計手法です。特に複数電源を用いる場合は、シーケンシャル起動や過電圧保護も含めたトータルな電源管理が求められます。

プロセス変動、温度変動、製造バラツキ補正

アナログASICの性能は、半導体製造プロセスに起因するばらつきや温度変動の影響を強く受けます。そのため、初期段階からプロセスコーナー(TT, SS, FF等)を考慮したマルチコーナー設計が重要です。また、設計段階での回路マージンの確保や、温度センサを用いた動的補償機構の実装も有効です。加えて、製造後のキャリブレーションを可能にするために、アナログトリミング機能やメモリ調整機能を設けることで、性能のばらつきを吸収することが可能となります。こうした対策により、量産品でも安定した性能を確保することができます。

まとめ

センサー用アナログASICの設計は、多様な信号特性とアプリケーション要件を踏まえた統合的なアプローチが不可欠です。ノイズ、温度、プロセス変動への対策が設計品質を左右します。

センサー用アナログASIC設計の技術的ポイント整理

センサー用アナログASIC設計では、アプリケーションに特化した性能を得るため、一般的なアナログ設計と異なる配慮が求められます。たとえば、低ノイズ増幅回路の最適化、信号の補正・フィルタ処理、温度・プロセスばらつきへの対策、そしてA/D変換との整合性が重要な設計要素です。これらの各ブロックを分離して設計するのではなく、センシングの目的に応じたトポロジと仕様設定を最初に定め、システム全体を見渡した設計戦略が不可欠です。加えて、試作時の検証手法と測定ポイント設計も初期段階で検討する必要があります。

設計初期に検討すべきパラメータと回路アーキテクチャ

設計着手時には、対象センサーの出力レンジ、帯域幅、許容ノイズレベル、電源要件、動作温度範囲、製品寿命などから主要な設計パラメータを定義する必要があります。特にアナログフロントエンドのトポロジは、アプリケーションによって大きく異なるため、構成選定が初期設計の成否を分けます。例えば、高インピーダンス出力のセンサーにはバッファ付きの入力段を、動的レンジの広い信号にはAGC(自動利得制御)付きの増幅系を検討するなど、初期要件とアーキテクチャの整合が非常に重要です。

システム全体の中でのアナログASICの役割

センサー用アナログASICは単体で完結するものではなく、マイコンやDSP、通信モジュールとの連携が前提となるため、I/Oインタフェースやタイミング仕様、消費電力の制約も踏まえた設計が求められます。また、後段のデジタル処理との接続性を考慮して、ADCの出力形式(シリアル、パラレル)、クロック同期、起動時間なども重要な設計要素です。さらに、電源投入時の状態遷移やESD対策、信号立ち上がり時の過渡応答制御など、周辺回路との連携を視野に入れた統合設計が求められます。

FeRAM搭載アナログASICの設計・開発サービスについて
https://www.ramxeed.com/jp/products/asic-assp/

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