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FeRAMをもっと知る
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2025.8.29

環境センサにおける不揮発性メモリ活用の実態と選定ポイント

環境センサの設計において重要な不揮発性メモリの選定ポイントを解説します。電源断対策、高温多湿環境での信頼性、低消費電力化に向けたFRAM(FeRAM、強誘電体メモリ)など次世代技術の活用方法を紹介します。

環境センサが直面するメモリ要件と環境課題

電源断や通信不能時のデータ保持ニーズ

環境センサは、遠隔地やインフラ設備に設置されることが多く、通信不能や一時的な電源断といったリスクに常にさらされています。このような状況でも計測データの欠損を防ぐには、電力が遮断された際にも即座に情報を保存できる不揮発性メモリが必要です。特に、周期的なセンシング結果をローカルに一時保存し、後に転送する用途では、データ保持機能と高速書き込みが両立できるメモリが求められます。EEPROMやフラッシュに代わり、低消費電力かつ書き換え耐性に優れるFRAMなどの導入が進んでいます。

高温・高湿・振動などの過酷な動作条件

環境センサは屋外設置や車載用途など、温湿度の急変や振動が頻発する条件下で運用されることが多く、搭載されるメモリもその環境耐性が厳しく問われます。従来のフラッシュメモリは高温・高湿環境での信頼性に課題があり、データ保持期間の短縮や書き込みエラーが発生する可能性があります。一方で、FRAMやMRAMなどの次世代不揮発性メモリは耐熱性や耐振動性に優れており、長期安定動作が期待されます。設計段階での信頼性評価において、こうした環境耐性は極めて重要な検討項目です。

センサ長期運用に求められる信頼性・耐久性

インフラ監視や農業、スマートシティ関連の用途では、環境センサは数年以上にわたる長期運用を前提としており、内部に搭載されるメモリにも高い書き換え耐性と長期保持性が要求されます。特に、10年以上にわたりデータを保持しつつ、頻繁な書き込みにも耐えることが求められるため、フラッシュやEEPROMでは耐久性の限界が見え始めています。これに対しFRAMやMRAMは数兆回以上の書き換えを保証しつつ、高温環境下でもデータを保持できる特性を有しており、センサの長寿命化とメンテナンス軽減に大きく貢献します。

不揮発性メモリの種類と特徴を比較する

フラッシュ・EEPROMの限界とFRAM・MRAM・ReRAMの台頭

従来の不揮発性メモリとして広く普及していたフラッシュやEEPROMは、コスト面や実績での優位性はあるものの、書き換え回数や書き込み速度、消費電力の面で限界が顕在化しています。特に低電力動作や高速性が求められるセンサ用途では、これらの課題が顕著です。次世代メモリとして注目されるFRAM(強誘電体RAM)、MRAM(磁気抵抗RAM)、ReRAM(抵抗変化RAM)は、各種短所を補完する特性を有し、用途に応じた最適選定が重要です。例えば、FRAMは高速書き込みと低消費電力、MRAMは耐放射線性と高耐久性で注目されています。

書き換え耐性・保持期間・動作電圧など技術比較

各種不揮発性メモリの選定には、耐久性、保持性能、書き込み速度、消費電力、動作電圧といった複数の性能指標を総合的に比較する必要があります。EEPROMは100万回程度の書き換え耐性に対し、FRAMは1兆回を超える実績を持ちます。MRAMはさらに高い書き換え耐性と読み出し高速性を有し、ReRAMは構造が単純で集積度が高いという利点があります。加えて、FRAMやReRAMは比較的低電圧(1.8V前後)で動作可能であり、省電力設計に適しています。センサの用途ごとに、これらの技術要素をバランスよく評価することが求められます。

エネルギーハーベスティング対応の低電力メモリ

近年、バッテリレスまたはエネルギーハーベスティング(太陽光、振動、温度差などからの微小電力供給)で駆動する環境センサが増えており、極めて低消費電力で動作可能なメモリが不可欠です。従来のフラッシュやEEPROMでは、書き込み時に高電圧が必要となり電力効率が悪いため、このようなシステムとの相性は良くありません。これに対してFRAMは、書き込みに要するエネルギーが極めて少なく、低電力で繰り返し書き換えが可能であるため、ハーベスト電源環境でも安定動作が実現可能です。こうした特性により、次世代環境センサでの採用が拡大しています。

環境センサ向け不揮発性メモリの活用事例

スマートメーター・IoTセンサでのFRAM採用事例

スマートメーターやIoTセンサでは、計測データを短周期で記録し、一定期間保存してから送信するという運用が一般的です。この場合、頻繁な書き込みと省電力動作が求められ、従来のEEPROMでは書き換え寿命の問題が生じます。FRAMは高速かつ低電力での書き込みが可能で、しかも1兆回以上の書き換えに耐えるため、データログ用途に最適です。実際に、海外のスマートメーター事例では、通信トラブル時にも欠損なくログを残せる仕組みとして、FRAMを搭載した設計が多く採用されています。このように、実用レベルでの導入が進んでいる点も注目すべき要素です。

車載・屋外センサでの実装ノウハウと工夫点

車載用や屋外設置型のセンサでは、-40℃から+125℃の広い動作温度範囲、長期間の耐候性、振動や衝撃への耐性が不可欠です。このような厳しい環境においても、センサは正確にデータを記録し続ける必要があり、メモリの信頼性が設計の成否を左右します。FRAMやMRAMなどの耐環境性に優れた不揮発性メモリは、このような要件に対応するため、回路設計の中でも特に選定が重視されています。基板のレイアウトやシールド処理、過電圧保護回路と組み合わせることで、メモリの性能を最大限に引き出す工夫が実装段階で行われています。

書き換え頻度・容量・電力のトレードオフ設計

環境センサにおけるメモリ選定では、「容量が大きい=良い」とは限りません。設計者は、必要な記録頻度、電力制限、通信タイミングなどから、容量・消費電力・寿命のトレードオフを考慮する必要があります。例えば、数十KB程度のFRAMでも、1分ごとのログ記録を年単位で保存可能で、通信が復旧した段階でまとめてデータを送信する方式に適しています。逆に、通信頻度が高く電力制限が厳しい用途では、あえて小容量・高速アクセスに特化した構成が望まれます。このように、ユースケースに応じて最適な構成を導くことが、センサ設計における鍵となります。

まとめ

用途別に見るメモリ選定のチェックリスト

環境センサに適した不揮発性メモリを選定する際には、以下の観点から性能を整理することが重要です。①動作温度範囲、②書き換え耐性、③電力消費、④保持期間、⑤書き込み速度、⑥パッケージ形態、⑦実装実績、などです。これらをもとに用途別に評価すると、たとえば遠隔設置でログ保存が中心の用途ではFRAMが適しており、耐放射線性が重要な産業機器ではMRAMが有力です。こうした選定フローを標準化しておくことで、開発工数の削減と製品信頼性の両立が可能になります。

今後の技術進展と環境対応型メモリの未来

不揮発性メモリは今後も進化を続け、微細化による大容量化やさらなる省電力化、量産性の向上が進んでいくと予測されます。特に、エネルギーハーベスティングやゼロメンテナンスを志向したセンシングシステムの台頭により、低電力・高信頼性メモリのニーズは今後さらに拡大するでしょう。加えて、集積化が進めばSoC化されたセンサプラットフォームに直接メモリを組み込む「eNVM」の活用も進み、よりスマートな制御が実現されていきます。不揮発性メモリは、センシング技術の基盤としてますます重要な存在となるでしょう。

設計者が押さえておくべき選定ポイントの整理

不揮発性メモリの選定は、単なるスペック比較ではなく、用途特性・環境条件・電力制約・長期運用要件を加味した総合的な判断が必要です。設計者は、使用目的ごとに求められる性能を明確化したうえで、将来のアップグレード可能性やサプライチェーンの安定性も含めて選定すべきです。また、メモリ単体の特性だけでなく、周辺回路設計やソフトウェア処理との連携も設計全体の最適化には欠かせません。不揮発性メモリは、単なる記憶装置ではなく、センサの信頼性・機能性を左右する“戦略的な部品”であるという視点を持つことが重要です。

RAMXEEDが提供するFeRAM製品一覧
https://www.ramxeed.com/jp/products/feram-products

RAMXEEDが提供するReRAM製品一覧
https://www.ramxeed.com/jp/products/reram-products/

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