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2025.6.2

フラッシュメモリとEEPROMの違いとは?設計に適した不揮発性メモリを選ぶための技術比較

フラッシュメモリとEEPROMの構造や動作原理、容量や書き換え耐性などのスペックを比較し、用途ごとの選定ポイントを詳しく解説します。最適な不揮発性メモリを選ぶための設計指針を紹介します。

フラッシュメモリとEEPROMの基本構造と動作原理

不揮発性メモリとは何か?

不揮発性メモリ(Non-Volatile Memory)は、電源供給が遮断された後も保持した情報を維持できるメモリ技術の総称です。ROM(Read Only Memory)系に分類され、代表的なものにEPROM、EEPROM、フラッシュメモリがあります。これらはすべて電気的にデータの書き換えや消去が可能ですが、それぞれ書き換え単位や速度、容量、耐久性に違いがあります。特に組込み設計においては、省電力性と信頼性の両立が求められるため、不揮発性メモリの選定は極めて重要です。

EEPROMの構造と書き換えメカニズム

EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)は、1バイト単位での書き換えや消去が可能な不揮発性メモリです。構造としては、フローティングゲート型のMOSトランジスタを使用し、Fowler-Nordheimトンネル効果を用いた電子の注入・除去によってデータの書き換えが行われます。このため、細かいデータ更新が頻繁に発生する用途に適していますが、一方で書き換え速度はフラッシュに比べて遅く、容量の拡張性にも限界があります。信頼性と微細な制御性を重視する用途で選定されます。

フラッシュメモリの構造と特性

フラッシュメモリは、EEPROMと同様にフローティングゲート型トランジスタを使用しますが、異なるのはその書き換え単位です。EEPROMがバイト単位で書き換え可能であるのに対し、フラッシュメモリは基本的にブロック単位で消去・書き込みを行います。これにより、大容量でも高速な書き込み・消去が可能となり、コストパフォーマンスにも優れています。ただし、細かいデータ更新には不向きであり、データの断片化や書き換えアルゴリズムの工夫が必要になることもあります。

主要スペック比較:容量・速度・書き換え耐性

容量と集積度の違い

EEPROMはその構造上、集積度を高めにくいため、一般的に数kB〜数百kB程度の容量にとどまります。一方、フラッシュメモリはブロック単位での書き換えを前提とする設計のため、セルの集積効率が高く、数MB〜数GB、あるいはそれ以上の大容量化が可能です。これにより、大規模なデータ格納が必要な用途ではフラッシュが主流となります。ただし、容量が大きくなるほど消去単位も大きくなるため、更新頻度の高い小規模データには不向きなケースもあります。

書き込み/消去速度の違い

書き込みおよび消去速度においても、両者には明確な差があります。EEPROMは1バイト単位での書き換えが可能ですが、その分書き込み処理は遅く、数ms〜数十ms程度の時間がかかることが一般的です。これに対して、フラッシュメモリはブロック単位で並列的に書き込み・消去を行えるため、容量に対するスループットは高く、高速アクセスが求められる用途に適しています。ただし、初期化や再書き込みの際には、事前にブロック全体の消去が必要となる点に注意が必要です。

書き換え回数と耐久性の比較

不揮発性メモリの信頼性を判断する上で、書き換え可能な回数(耐久性)は非常に重要な指標です。EEPROMの一般的な書き換え寿命は100万回程度とされており、頻繁なデータ更新に適しています。対して、フラッシュメモリは構造上の制約から書き換え寿命が数万〜10万回程度に制限されることが多く、長寿命化のためにはウェアレベリングやエラーチェックなどの補助技術が不可欠です。用途に応じた寿命設計を行わなければ、信頼性低下やデータ破損のリスクが生じる可能性があります。

用途別の選定ポイントと実装事例

低容量・高信頼性用途にはEEPROM

EEPROMは、頻繁なデータ書き換えが必要でありながら、データ量自体は小さいシステムに最適です。たとえば、IoTセンサーや医療機器などでは、測定値や設定情報を高頻度かつ確実に記録する必要があります。こうした用途ではEEPROMの高い書き換え耐性と1バイト単位でのアクセス性が強みとなります。また、自動車のECU(Electronic Control Unit)など安全性が求められる環境でも、安定動作を重視したEEPROMが採用される傾向があります。信頼性を最優先する現場では、有力な選択肢です。

大容量ストレージ用途にはフラッシュ

フラッシュメモリは、大容量データを効率的に格納・読み出しする必要がある用途に適しています。たとえば、スマートフォンやデジタルカメラの内部ストレージ、USBメモリ、SSDなどがその代表例です。これらのデバイスでは、ファイルシステムを利用した大規模データの管理が行われるため、容量あたりのコストが安く、高速なアクセスが可能なフラッシュメモリが採用されます。ただし、頻繁な書き換えが発生する場合はウェアレベリングなどの補助機構が必須となります。

組み込み設計における選定の実際

組み込みシステムでは、使用目的や消費電力、コストなど複数の要素を総合的に考慮してメモリを選定する必要があります。設定情報の保存など小容量で頻繁な更新が求められる場合はEEPROMが適しており、ログ記録やファームウェア格納など中〜大容量が必要な場合にはフラッシュが選ばれます。また、最近ではEEPROMとフラッシュを組み合わせて使用するハイブリッド構成も一般的になっています。用途を明確にし、それに最適化した選定が信頼性の高いシステム構築につながります。

まとめ

それぞれの特徴を整理する

EEPROMは、微細なデータの高頻度な更新が求められる環境に適したメモリであり、高い書き換え耐性と柔軟なアクセス制御が強みです。一方で、容量や書き込み速度には制限があります。フラッシュメモリは、高集積化と高速処理を両立させた構造により、大容量ストレージに最適です。ただし、書き換え回数の制約やブロック単位の操作に起因する制御の難しさも伴います。これらの特性を正しく理解することで、設計精度の向上が図れます。

設計条件に応じた使い分けが鍵

メモリ選定においては、単に性能の優劣で判断するのではなく、設計条件との整合性が重要です。たとえば、長期的な安定運用や頻繁な設定情報の保存が必要であればEEPROMが有効です。一方、ファームウェアやデータログなどの保存には、容量・速度・コスト面で優れたフラッシュメモリが適しています。設計の初期段階で使用目的を明確にし、必要なスペックと機能に基づいて選定を行うことが、最適なシステム構成につながります。

将来の技術動向と選定への影響

不揮発性メモリの技術は進化を続けており、近年ではFRAM(FeRAM)やMRAMといった新しいメモリ技術も注目されています。これらはフラッシュやEEPROMの課題である書き換え寿命や消費電力、アクセス速度のバランスを改善する可能性を持っています。今後の設計では、こうした新技術の採用可否も視野に入れた比較検討が求められます。既存技術の深い理解と将来動向への対応力が、設計エンジニアにとって不可欠なスキルとなるでしょう。

RAMXEEDが提供するFeRAM製品一覧
https://www.ramxeed.com/jp/products/feram-products

RAMXEEDが提供するReRAM製品一覧
https://www.ramxeed.com/jp/products/reram-products/

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