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FeRAMをもっと知る
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2025.12.12

FRAMとSRAM、どちらを選ぶべきか?設計要件別での比較と選定ガイド

FRAM(強誘電体メモリ、FeRAM)とSRAMの違いや特性を、構造、速度、消費電力、耐久性などの観点から詳しく比較します。用途や設計要件に応じた選定ポイントを解説し、最適なメモリ選びを支援します。

FRAMとSRAMの基礎知識とアーキテクチャの違い

FRAMとSRAMはともに高速アクセスが可能なRAMの一種ですが、揮発性か不揮発性か、構造や用途において大きく異なる特性を持ちます。この章では両者の基本的な構造と動作原理について整理し、それぞれのメモリがどのような役割で活用されているかを技術的観点から解説します。基礎知識を押さえることで、後の比較や選定判断が明確になります。

SRAMの構造と特性:揮発性・高速アクセスの仕組み

SRAM(Static Random Access Memory)は、記憶素子としてフリップフロップを用いた揮発性メモリであり、外部からの電源供給が途絶えると記録内容が消失する特性を持っています。アクセス速度が非常に高速で、主にキャッシュメモリやプロセッサ近傍の高速一時記憶領域として利用されます。構造的にはリフレッシュ不要で、アクセス待ち時間が少ないため、リアルタイム性が求められる用途に向いています。一方で、セル構造が6トランジスタ構成であるため集積密度が低く、同容量のDRAMやFRAMと比べてコストや実装面積が大きくなる傾向にあります。

FRAMの構造と特性:不揮発性・低消費電力の特徴

FRAM(Ferroelectric RAM)は強誘電体キャパシタを用いた不揮発性メモリで、電源が遮断されてもデータを保持できる点が最大の特長です。FRAMはフリップフロップや浮遊ゲートを使わず、強誘電体の分極反転によって情報を記録するため、書き込み動作におけるエネルギー消費が非常に少なく、百兆回にも及ぶ高い書き換え耐久性を実現します。さらに、書き込み速度もFlashやEEPROMに比べて高速で、ランダムアクセス性にも優れています。FRAMは揮発性メモリと不揮発性メモリの中間に位置する存在とも言え、電源断が頻繁に起こる用途において非常に有効です。

用途によって変わる揮発性・不揮発性の選択意義

メモリの揮発性・不揮発性は、アプリケーションの信頼性やデータ保持要求に直結する重要な選定軸です。揮発性であるSRAMは動作中の一時的な高速処理に特化しており、常時電源供給が前提の用途で性能を発揮します。一方、FRAMは不揮発性により、突然の電源断や長時間無通電環境でもデータ保持が可能なため、ログ保存や設定データの保護に向いています。アプリケーションがリアルタイム性を優先するか、電源断対応を重視するかによって、選択すべきメモリの種類は大きく変わります。これにより、単なる性能比較以上に、実用環境に応じた特性理解が求められます。

設計要件別:FRAMとSRAMの性能比較

メモリを選定する際は、単に容量や価格だけでなく、アクセス速度、消費電力、書き換え耐久性、データ保持時間など、複数の技術要件を考慮する必要があります。この章ではFRAMとSRAMをそれぞれの観点で詳細に比較し、実際の製品設計における選定基準として役立つ要素を明確化していきます。

アクセス速度とリアルタイム性能の比較

SRAMは読み書き共にナノ秒オーダーの高速アクセスが可能であり、リアルタイム性が求められるアプリケーションで優位性を持っています。特にプロセッサのキャッシュメモリとして使われるように、頻繁なアクセスやミッションクリティカルな処理に適しています。一方、FRAMも他の不揮発性メモリに比べて高速ですが、アクセス速度ではSRAMに及ばず、通常は100ns前後の性能です。ただし、FRAMは書き込み時にも読み取り時と同等の速度を発揮できるため、フラッシュやEEPROMのように遅延が発生しません。結果として、用途により必要な速度レベルを見極めた上での判断が必要です。

消費電力とスタンバイ電流:低消費設計への適合性

FRAMは動作時の消費電力が極めて小さく、特に書き込み時のエネルギー消費が数十ナノジュールと低いため、バッテリ駆動機器や省電力設計を重視するシステムで非常に有利です。また、スタンバイ時のリーク電流も極めて低く、スリープモードを活用する用途に適しています。対照的にSRAMは常時電源が必要であり、セルが自己保持のために電流を継続的に消費するため、待機時にも電力負荷が発生します。特にモバイル機器やIoTセンサなどでは、電力制約が厳しくなるため、消費電力面からの選定はメモリ選びに大きく影響します。

書き換え耐久性とデータ保持期間の違い

SRAMは書き換えに制限がなく、揮発性ゆえに耐久性の概念は特に重要視されませんが、FRAMは不揮発性でありながら10^14回以上の書き換え耐性を持ち、他の不揮発性メモリと比べて極めて高い耐久性を誇ります。例えばEEPROMが10万~100万回程度の書換寿命であるのに対し、FRAMは日常的に頻繁な書き換えを行う用途でも使用が可能です。さらに、データ保持期間も10年以上と長く、電源断後の情報保持が求められるシーンにおいても安心して利用できます。つまり、高頻度な書き込みと長期保存の両立が必要な場合にはFRAMが理想的です。

アプリケーション別:採用実例と選定の考え方

FRAMとSRAMは、用途によって評価軸が変わります。データロギング、バッテリ駆動機器、リアルタイム処理など、それぞれが持つ特性を最大限活かせる場面が存在します。この章では、実際の使用例を踏まえ、どのような条件でどちらのメモリが適しているかを検討する指針を示します。

センサデータロギングやイベント履歴保存への適性

FRAMは、書き込み頻度が高く、かつ電源断時にもデータを保持する必要がある用途、特にセンサのロギング用途に適しています。温度や振動、加速度などのデータを定期的に記録するアプリケーションでは、数秒ごとに書き込みが発生し、それが1日数万回に及ぶケースもあります。FRAMであればそのような頻度でも寿命を気にせず使えるため、ログ記録用途での採用事例が増えています。また、停電や意図しないシャットダウンが発生しても記録内容を保持できる点も評価されています。一方、SRAMではバックアップ電源が必要で設計が煩雑になるため、FRAMが優先される傾向にあります。

バッテリ駆動機器・電源断時の動作を考慮した選定

モバイル機器やIoTセンサノードなど、バッテリ駆動が前提のシステムでは、消費電力と電源断時のデータ保持が大きな設計課題となります。FRAMは電源がなくてもデータを保持できるため、リアルタイムクロックデータや動作ログ、設定値などの保存に適しています。さらに、スリープモードからの復帰時にデータの初期化が不要で、システム立ち上げ時間の短縮にも寄与します。これに対してSRAMを使用する場合、バッテリバックアップ回路や外部キャパシタなどを追加する必要があり、基板設計や保守面での負担が増大します。結果として、FRAMは設計の簡素化にも貢献します。

コスト・パッケージ・供給性を含めた実装上の考慮点

FRAMは近年普及が進み、主要メモリメーカーからも各種容量やパッケージの製品が提供されていますが、依然としてSRAMと比較すると単価が高めです。特に大容量になるほどコスト差は顕著になります。そのため、容量と予算のバランスを見極める必要があります。また、SRAMは豊富なラインナップと長年の実績があり、供給面でも安定している一方、FRAMは製造元が限定されるケースがあり、長期供給リスクも考慮する必要があります。さらに、ピン数やバス構成などの実装要件にも違いがあるため、基板設計段階から各メモリの仕様を正確に把握しておくことが求められます。

用途と要件に応じた最適なメモリ選定の指針

これまでの比較や活用例を踏まえ、最終的な選定判断に必要なチェックポイントをまとめます。リアルタイム性、電力制約、コスト、実装要件といった多面的な条件を整理し、目的に応じた最適なメモリの選び方を支援する内容を提示します。製品開発の初期段階での要件定義に役立ちます。

要件整理と用途別の選定ガイドライン

SRAMとFRAMの選定においては、アプリケーションの要件を明確に整理することが重要です。具体的には、リアルタイム性、消費電力制約、書き込み頻度、データ保持の必要性、そしてコストや供給性といった複合的な観点から比較し、自社製品に最適な構成を導き出す必要があります。高速処理が重視されるシステムではSRAM、頻繁な書き込みと電源断時の安定性が求められる用途ではFRAMといったように、特性と目的の整合性をとることがメモリ選定の基本です。

将来性と技術動向から見たFRAMとSRAMの立ち位置

FRAMはIoT、ウェアラブル、医療機器といった分野で需要が増加しており、今後の技術革新により大容量化やコストダウンも期待されています。一方、SRAMは成熟技術としてすでに多くのプラットフォームに統合されており、今後も高速メモリとしてのポジションは不変と考えられます。将来的には用途ごとに両者が補完的に使われるシナリオが増えると想定され、適材適所での組み合わせ運用も視野に入れることが求められます。

実装検討時に押さえておくべき比較チェックリスト

実際の製品開発においては、単なるデータシートの比較に留まらず、以下のような観点での事前確認が重要です。①動作時と待機時の消費電力、②アクセス時間、③書換耐久性、④データ保持期間、⑤必要な周辺回路の有無、⑥供給期間・メーカーの信頼性、⑦コスト・面積の制約、などを網羅的に評価し、最終的な選定判断を行うべきです。このようなチェックリストを事前に持つことで、開発後期の設計変更リスクを最小限に抑えることが可能になります。

RAMXEEDが提供するFeRAM製品一覧
https://www.ramxeed.com/jp/products/feram-products

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