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HMIシステムにおける不揮発性メモリ活用ガイド:安全なデータ保持と信頼性設計のポイント

HMIシステムで使用される不揮発性メモリの種類や特性、用途別の選定ポイントについて解説します。各種メモリの書き換え耐性や環境性能の違いを踏まえ、信頼性の高いHMI設計を行うための判断基準を紹介します。

HMIシステムにおける不揮発性メモリの役割

HMIシステムは、装置と人間をつなぐ重要な役割を担っており、日常的に行われる操作や設定データの保持が求められます。特に電源断や突発的な停止が発生した際にも、動作状態やユーザーの設定を失わずに維持できるよう、不揮発性メモリを利用することが重要です。このメモリの適切な選定と設計への組み込みは、HMI全体の信頼性と保守性に直結します。

電源遮断時のリスクとその対策

HMIシステムでは、工場や設備での稼働中に突発的な電源遮断が発生することがあります。そうした場合に、設定や動作ログが失われてしまうと、再起動後の再設定に時間がかかるだけでなく、トラブル原因の追跡が困難になります。こうしたリスクに対応するためには、書き込み速度が速く、即座にデータ保存ができる不揮発性メモリを採用することが有効です。加えて、電源監視ICやキャパシタと連携させた電源バックアップ設計を行うことで、確実なデータ保持と復旧が可能になります。

設定保持・アラーム記録への活用

HMIでは、ユーザー設定、パラメータ情報、アラーム発生履歴、運転ログなど、多様な情報を保持し続ける必要があります。これらの情報は、操作履歴の再確認やトラブル時の原因特定、装置のメンテナンス履歴の記録などに活用され、システムの安全性と効率性に貢献します。不揮発性メモリは、電源が落ちた場合にもこれらの情報を維持する手段として有効であり、保存対象のデータの特性に応じて最適なメモリを選ぶことで、長期安定運用が可能になります。

信頼性と長期使用に必要な特性

産業用HMIシステムは長期間の安定稼働が求められ、構成部品には高い信頼性が求められます。特に不揮発性メモリには、10年以上のデータ保持性能や高い書き換え耐性、広い動作温度範囲などが求められます。これらの要件を満たすためには、搭載するメモリの技術的特性を詳細に確認し、ライフサイクルに沿った評価を実施することが重要です。また、誤書き込み防止やエラー検出機能を備えた製品を選定することで、さらなる信頼性向上が図れます。

HMI用途で使われる不揮発性メモリの種類

HMIシステムでは、設定保持やログ保存など多様な用途に応じて、不揮発性メモリを適切に選定することが求められます。EEPROM、Flash、FRAM、MRAMなど、各メモリには異なる特徴があり、書き換え耐性、容量、速度、コストなどの観点から使い分ける必要があります。設計要件を明確にし、長期安定稼働を見据えた選定が重要です。

EEPROM・Flash:汎用的だが書き換え頻度には注意

EEPROMは小容量の設定データや構成情報を記録するのに適しており、1バイト単位での書き換えが可能です。書き換え頻度が低く、保存対象が限られている用途では使いやすい選択肢です。Flashメモリは大容量でコスト効率に優れており、HMIの画面構成情報や言語ファイルなどの保存によく利用されます。しかし、どちらのメモリも書き換え寿命に制約があり、繰り返し更新されるデータの保存には向いていません。さらに、Flashはブロック単位の消去が必要となるため、リアルタイム性が求められる処理には制約があります。これらの点を踏まえ、用途に合った導入が重要です。

FRAM・MRAM:高頻度書き換えとリアルタイム性に強み

FRAM(強誘電体RAM、FeRAM)は、非常に高い書き換え耐性(約1兆回以上)と低消費電力、高速な書き込み特性を兼ね備えたメモリです。書き込み時にウェイトが発生せず、書き込み完了を待たずに次の処理に移れるため、リアルタイム性が求められるHMIシステムに適しています。ユーザー操作ログやセンサーデータの周期的な保存、または低消費電力が求められるバッテリ駆動型のHMI端末などで活用されています。MRAM(磁気抵抗RAM)も同様に不揮発性と高速性を両立しており、書き換え耐性にも優れています。より高機能なHMIシステムにおいて、頻繁なデータ更新が必要な領域への実装が進んでいます。どちらのメモリも従来のEEPROMやFlashでは対応が難しい用途をカバーする手段として注目されています。

過酷な環境に対応する産業グレードのメモリ選定

HMIは高温・振動・湿度・粉塵などの過酷な環境下で使われることが多く、不揮発性メモリにも高い耐環境性能が求められます。近年では、多くのメモリメーカーが同一製品に対し、用途に応じた産業用グレードや車載グレードなど複数の信頼性レベルを提供しています。HMIの使用条件に合わせてこれらから適切なグレードを選ぶことが、長期安定稼働と保守性の確保につながります。また、長期供給の可否や設計変更リスク、動作温度範囲、保持期間、パッケージ仕様、インターフェースなども含め、システム全体との整合性を見て総合的に検討することが重要です。

設計時に考慮すべきチェックポイント

不揮発性メモリの選定は、記録対象データの特性、書き換え頻度、保持期間、システム構成、インターフェース仕様など、複数の要因を総合的に判断して行う必要があります。容量や価格だけでなく、長期的な運用と保守のしやすさまでを含めて最適な構成を検討することが、堅牢なHMI設計には不可欠です。

書き換え頻度・保持期間の要件整理

データの書き換え頻度と保持期間の要件を明確にすることで、適切な不揮発性メモリの選定が可能になります。たとえば、初期設定後にほとんど更新されないパラメータにはEEPROMやFlashが適していますが、リアルタイムに記録されるログデータにはFRAMやMRAMのような高耐久メモリが必要です。また、データの保存期間が10年を超えるような用途では、保持性能を保証する仕様のメモリが求められます。用途ごとの要件整理は、選定ミスを防ぐ第一歩となります。

電源変動・停電への対応力

工場やフィールド環境では、電源が不安定になったり突然遮断されたりすることがあります。そうした場合に重要なデータを確実に保存するには、書き込み速度の速い不揮発性メモリを用いるだけでなく、電源監視回路やコンデンサによるバックアップ設計との連携が必要です。データ破損のリスクを最小限に抑えるため、保存中の動作タイミングやシステム全体の電源管理方針と組み合わせて、信頼性を高める設計を行うことが重要です。

コスト・回路構成・インターフェース選択

不揮発性メモリの選定では、製品単価や実装面積といったコスト面に加え、システム構成への影響も考慮する必要があります。たとえば、バッテリーバックアップ付きのメモリを採用すれば、電源設計や保守計画にも影響を及ぼします。また、SPI、I2C、パラレルなどの通信インターフェースに対応しているかどうかも、マイコンとの親和性を左右します。全体としての設計最適化を目指すためには、技術的要件とコストの両面でバランスを取る必要があります。

不揮発性メモリ活用の最適化に向けて

HMIシステムの信頼性を高めるためには、保存対象データの性質、更新頻度、使用環境、電源設計などを考慮し、最適な不揮発性メモリ技術を導入することが重要です。要件に応じて使い分けを行い、長期運用を見据えた設計に反映させることが成功の鍵です。

用途に応じた技術の使い分け

一つのHMIシステム内でも、保存対象となるデータは多岐にわたり、それぞれに異なる要件が存在します。設定情報のように変更頻度が低いデータはEEPROMやFlashで十分対応できますが、運転ログやアラーム履歴など頻繁に更新されるデータにはFRAMやMRAMのような高耐久メモリが必要です。適切な使い分けにより、不要なコストや設計上の複雑さを回避しつつ、長期的な信頼性と性能を確保することが可能となります。

選定ミスを避ける設計上の注意点

不揮発性メモリの選定を誤ると、システムの信頼性が損なわれ、現場での運用に重大な支障をきたす可能性があります。たとえば、書き換え耐性を超えて使用した場合にはデータ破損が発生し、装置全体の動作停止や誤動作につながる恐れがあります。また、保存期間が不足していれば、メンテナンス中に重要な設定が消失する危険性もあります。こうしたリスクを避けるためには、設計初期段階から保存対象の要件を明確に定義し、それに適した製品を正確に選定する必要があります。

HMIシステムにおける今後の動向

HMIは今後、IoTやAIの活用が進む中で、より多機能・高性能化していくことが見込まれます。それに伴い、扱うデータ量や保存頻度も増加し、不揮発性メモリに求められる性能も高まります。今後は、高速性、耐久性、低消費電力を備えた次世代メモリ技術、例えばFRAMやMRAMといったデバイスの活用が主流となっていくと予測されます。これに備えて、柔軟性と拡張性を持った設計思想を取り入れておくことが、将来の設計資産としての価値を高めることにつながります。

RAMXEEDが提供するFeRAM製品一覧
https://www.ramxeed.com/jp/products/feram-products

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