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FeRAM

125℃・10年のデータ保持を保証する高信頼FeRAM :「RAMXEED ULTIMATE」を支える技術

著者情報
惠下 隆 ( 工学博士)
RAMXEED株式会社   シニアスペシャリスト


高温環境での長期データ保持と、高頻度書込みを両立するメモリが求められています。 RAMXEEDの強誘電体メモリ(FeRAM)は、この課題に応えるために進化を続けてきました。

高温環境でも確実にデータを残せるメモリへ

FeRAMは、不揮発性メモリであり、電源を切ってもデータを保持できる特長を持ちます。さらに、高速書込み、低消費電力、そして極めて高い書換え耐性を兼ね備えており、「頻繁に書く」と「確実に残す」を同時に実現できる点が大きな強みです。

FeRAM事業は、1999年に富士通が世界に先駆けて量産化に成功して以来、開発・製造・販売を担う技術者や事業チームとともに継承・発展してきました。現在のRAMXEEDはその流れを受け継ぎ、25年以上にわたり培われた技術と経験を基盤としてFeRAM製品を提供しています。累計出荷数量は44億個以上、採用国は60カ国以上に達し、社会インフラを支える高信頼メモリとして世界中で広く利用されています。

これまでのFeRAMの主な用途は、電力メーターや水道メーター、オフィス機器などであり、通常の自然環境の温度範囲(-40℃~85℃)で動作することが求められていました。しかし近年、工場設備や車載機器などにおいて、より過酷な環境での使用ニーズが急速に拡大しています。特に、エンジン周辺や設備内部などの高温環境においても、長期間データを保持できることが重要な要件となってきました。このような要求に応えるため、RAMXEEDは125℃環境での長期データ保持を実現するFeRAMを開発しました。

データ保持性能を支える2つの技術

この高温対応FeRAMは、材料技術と回路設計技術の両面から開発されています。

まず、FeRAMの根幹となる強誘電体キャパシタの改良です[1]。FeRAMでは、0と1の情報を分極状態として保持します(図1)。強誘電体キャパシタは、強誘電体材料が上下電極で挟まれた構造をしており(図2)、電極に電圧をかけることによって強誘電体を分極させて報を記憶させます。今回の開発では、強誘電体材料の成膜条件を最適化し、材料品質を向上させるとともに、電極と強誘電体の界面構造を改良しました。特に、界面に導入する薄膜層の最適化により、元素の相互拡散を抑制し、長期にわたって分極状態が安定に維持される構造を実現しています。

図1 強誘電体に(a)“0”と (b)“1”を書き込んだ分極状態

図 2 強誘電体キャパシタの断面構造

もう一つの重要な技術が、強誘電体SPICEモデルの構築です。RAMXEEDは、実測データに基づいて強誘電体の分極挙動を高精度に再現する独自モデルを開発しました。このモデルでは、分極特性だけでなくデータばらつきも考慮しており、125℃、10年後においても十分な動作マージンが確保されることを、回路設計段階で確認しています。
つまり、材料と設計を一体で最適化することで、長期信頼性を実現しています。

実証された高温信頼性

開発したFeRAMを、-45℃から125℃までの広い温度範囲において評価を行いました。(※)
”0”と”1”を書き込み、実際に使用する電圧(1.8 V)より低い電圧(1.65V)で読み出すという厳しい条件で評価した結果、全温度領域で十分な読出しマージンを確認しました(図3)。従来品では温度によってマージンが低下する傾向が見られましたが、改良品では温度に依存しにくい安定した読出し特性を示しています。
※ 製品の温度保証としては-40℃~125℃となります。

図3 温度を変えて測定した初期状態での“0”および“1”データの分布

図4. 150℃、1000時間加熱後の (a)同一情報読み出し(SS)と(b)反転情報読み出しの”0”および”1”データの分布

また、FeRAM特有の課題であるインプリントについても評価を行いました。インプリントとは、同じ分極状態を長時間保持した後に、反対の状態へ書換えた際に読み出しが困難になる現象です。150℃・1000時間の高温保持試験(約10年相当)において、保持した0または1と同じ状態を書いて読み出す「同一情報(SS: Same State)」読み出しと、情報を1または0に反転させて読み出す「反転情報(OS :Opposite State)」読み出しの特性を評価した結果、改良品ではOS読出しにおいても十分なマージンが維持されていることを確認しました(図4)。

「125℃・10年保証」という価値

不揮発メモリにおいて「125℃対応」や「10年保持」といった表現は一般的に用いられますが、その多くは実際の使用環境を想定したミッションプロファイルに基づく計算値です。つまり、125℃に常時さらされるわけではない前提で導出された値である場合が少なくありません。

これに対し、RAMXEEDのFeRAMは、125℃の環境に連続してさらされた状態で、10年間データを保持することを製品仕様として保証しています。これは前提条件に依存しない、実使用に近い条件での評価に基づいた保証値です。車載用途に限らず、産業機器やインフラ用途を含め、設計の前提として安心して利用できる仕様となっています。

高温・高頻度用途に最適なソリューション

RAMXEEDはこのFeRAMを「RAMXEED ULTIMATE」として商品化しました[2]。これらの製品は、高温環境下での長期データ保持と頻繁な書込み動作を両立するメモリとして、さまざまな分野での利用が期待されます。

まとめ

RAMXEEDのFeRAMは、25年以上にわたる量産実績に支えられた高信頼メモリです。
今回開発した「RAMXEED ULTIMATE」は、従来の強みに加え、125℃で10年という厳しい条件においてもデータ保持を保証する水準に到達しました。この性能は、強誘電体キャパシタの材料開発と、実測に基づくSPICEモデリングを融合した開発力によって実現されています。
RAMXEEDはこれからも、高信頼不揮発メモリを通じて、さまざまな分野のシステム設計を支えていきます。

参考文献

著者
惠下 隆
RAMXEED株式会社
工学博士・シニアスペシャリスト

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