数字で見るBGA――基板を占有する面積のTSOPとの比較
FeRAM(FRAM、強誘電体メモリ)は、電源が切れても記憶を保持できる半導体メモリです。データ消失に備えたバックアップ回路も、原理的には不要です。書き込み完了を待つための待機時間も省けるため、システム全体の設計をシンプルにできます。
回路削減はプリント基板の小型化にも寄与できます。せっかく基板の省スペース化を検討するのですから、思い切った変更をしたいものです。
従来主流だったTSOPパッケージは、リードが外側に張り出す構造です。そのため実装面積がどうしても大きくなってしまいます。基板の小型化や高密度実装を目指す際には、この占有面積の大きさは無視できません。
そこで注目したいのがBGAパッケージです。同じFeRAMでも、パッケージ形状を変えるだけで占有面積を大幅に削減できる可能性があります。
今回は具体的な型番を例に、その差を数字で確認していきます。
基板占有面積、TSOPとBGAの差
比較対象として取り上げるのは、8Mbit パラレルインターフェース FeRAMのMB85R8M2TAシリーズです。
同じ型番でありながら、パッケージにはTSOPとBGAの2種類が用意されています。実装面積を直接比較するのに、ちょうどよい例と言えるでしょう。
TSOPとBGAとは?
TSOPとBGAは、いずれも半導体のパッケージ形状を指します。
- TSOP(Thin Small Outline Package)
パッケージの両側面から外側へ向けてピン(端子)が並んで伸びている形状です。従来から広く使われていますが、ピンが外側に張り出す分、基板上に大きな面積が必要になります。 - BGA(Ball Grid Array)
パッケージの底面に小さな球状のはんだボールが格子状に並んでいる形状です。底面のスペースを端子として使うためパッケージの外側へのはみ出しがなく、基板の実装面積を小さく抑えられます。


TSOPとBGAのパッケージ比較表
TSOPとBGAのふたつのパッケージを比較してみます。対象はFeRAMのMB85R8M2TAシリーズです。
| 項目 | TSOP | BGA |
|---|---|---|
| パッケージ名称 | MB85R8M2TAFN-G-JAE2 | MB85R8M2TABGL-G-JAE1 |
| ピン数 | 44ピン | 48ピン |
| 実質配置サイズ | 13.00mm×19.00mm | 8.50mm×6.50mm |
| 基板占有面積 | 247.00mm² | 55.25mm² |
| 差分(削減量) | 基準値 | -191.75mm² |
| 基板占有比率 | 基準値 | 約22.4% |
数値を見ると、実質配置サイズは13.00mm×19.00mmから8.50mm×6.50mmへと縮小します。基板占有面積も247.00mm²から55.25mm²まで大幅に下がります。
差分は191.75mm²にのぼり、TSOPの4分の1程度まで占有面積が少なくなる計算です。
これより、BGAパッケージの小ささが一目瞭然であり、基板の小型化に寄与することがわかります。
BGAの優位性
ピン数は、TSOPの44ピンに対してBGAは48ピンです。ピン数自体はBGAがむしろ増えています。この点こそが、BGAの構造的な優位性を端的に示していると言えます。
BGAはリードを外周に張り出させない構造です。パッケージ底面にボール状の端子を格子状に配置するため、ピン数の増加が面積の増大に直結しにくいのです。
基板面積に制約のある機器では、この差は決定的な意味を持ちます。実装密度を高めたい設計においても同様です。
さらにBGAにはリードがありません。TSOPに比べてパッケージの強度も増します。移送中の損傷も起こりにくいと言えます。

BGA移行への心理的ハードルと、構造から見る誤解
BGAにこれほど明確なメリットがありながら、実際の設計現場ではTSOPが使われ続けてきました。なぜそのような事が起きているかを考えてみましょう。
目視検査の安心感
第一番目の理由は、目視検査のしやすさです。
TSOPはガルウィング状のリードが外側に露出しているため、実装後の状態を顕微鏡などで確認できます。
実装不良が発生した時の手はんだによる修正のしやすさも理由です。特に開発時の試作品では、メモリの物理的な交換をすることもあります。
TSOPは特別な設備なしで、部品交換が行えるのです。
プリント基板の設計資産を活用できる
TSOPは2層・4層基板でも配線できる、制約の緩さも見逃せません。加えて、過去の設計資産をそのまま流用できる安心感もあります。
いずれも開発時の試作や保守における、実務上の利点によるものです。
BGAに対する不安
特にBGAに対しては、根強い懸念が存在します。
端子が底面に隠れているため、実装後の状態を目視できません。クラックや未実装が起きても、発見しにくいのは確かです。
しかし、はんだの量と接合面の形状など、物理的な観点からは、この懸念は必ずしも実態と一致しません。
BGAのはんだボール
BGAは各端子に、あらかじめ均一で豊かな体積のはんだボールが固定されています。リフロー時にはその十分な量のはんだが溶け、強固な接合部を形成可能です。
一方でTSOPは、基板側の薄いパッドに印刷されたはんだペーストだけでリードを固定します。その量はもともとわずかです。そのため印刷厚みのムラが、未実装やオープン不良に直結しやすい構造です。
さらに接合面の形状にも違いがあります。BGAでは円形パッドの上面だけでなく、側面にまではんだが回り込むため、立体的なドーム状の接合が形成されます。
対して、TSOPではリードと基板上のランドは、はんだによる接合です。リードの形状や位置、はんだ印刷など、複数の条件が接合品質に影響します。
加えて、BGAのはんだボール自体が十分な厚みを持つことも重要です。
ICのリードがわずかに反っただけで、ピンが浮いてしまうTSOPとは対照的です。

TSOPとBGAの特徴の比較表
以上の項目を比較表にまとめました。
| 項目 | TSOP | BGA |
|---|---|---|
| 端子配置と目視検査 | リード露出/目視確認可能 | 底面配置/目視確認不可 |
| 修理・部品交換 | 手はんだでの修理・交換が容易 | 手はんだでの修理・交換が困難 |
| 基板の設計資産 | 2層・4層配線可/流用しやすい | 新規 |
| 供給されるはんだ量 | わずか(印刷ムラに弱い) | 豊か(均一で強固) |
| 接合面の形状 | リードとの接合 | 立体的なドーム状の接合 |
| 基板の反りへの追従性 | ピンが浮きやすい | 十分な厚みを持つ |
BGAパッケージへの見直しのすすめ
BGAパッケージへの移行は、単に基板の占有面積を削減するだけの選択肢ではありません。
はんだの量や接合面の形状など、製造品質の観点からも、TSOPに劣らない安定性を備えています。むしろ優れているとさえ言えるでしょう。
占有面積を約22.4%まで圧縮しながら、実装品質を落とさずに済む事実があります。これは小型化や高密度実装を検討するエンジニアにとって、大きな意味を持つはずです。
パッケージ選定の前提そのものを、見直すきっかけになるかもしれません。FeRAMの特性を最大限に活かすためにも、パッケージ形状の視点から設計を捉え直してみてはいかがでしょうか。
BGAパッケージ(MB85R8M2TA)を含むパラレルインターフェース FeRAMファミリ一覧
https://www.ramxeed.com/jp/product_detail/p-1/